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元気埼玉 > マネー > エコノミスト・金子豊治郎が語る「景気・株価の見方」
マネー
金子豊治郎の「景気と株価の見方」(2008年5月3日) 

<ポイント>

  • 実体景気は足元で足踏みしているが、底堅く、景気後退には至らない。
  • 海外要因で下落した平均株価は、今年半ばまでは上昇する。

(前回2月予測は、株価予測が現在までのところはずれていますが、基本判断は変えておりません)

1. 足元の景気−輸出主導でしぶとい動き

(1)年後半から指標は横ばい傾向
景気は、政府の公式判断としては、2002年1月を底とする、戦後最長の上昇局面にあるが、そもそもその勢いが弱い上に、その間上昇の止まるいわゆる「踊り場」を何度も繰り返してきた。直近でも07年に入り足踏み状態に陥った。景気を最も素直に示す統計である鉱工業生産指数(05年基準)を見ると、07年になり秋口まで鈍化した。
 しかし、その後は、08年春にかけて生産指数をはじめ主な景気指標はそれ以上悪化することなくほぼ横ばいで推移している。3月の鉱工業生産指数は、前月比▲3.1%の大幅マイナスとなったが、これは今年の3月は土曜、日曜がそれぞれ5回ずつあり休日が多かったという曜日要因によるとみられる。
目立って悪化、低迷しているのは、株価である。そのため、企業、消費者とも景況感は低下しており、「日銀短観」の業況判断指数も12月は+19(大企業製造業)で前回調査比4ポイント、08年3月には+11とさらに8ポイント悪化した。実体景気指標と景況感が乖離しつつある。

(2)アジア主導で輸出は持ち直す 
  07年後半からの景気を支えているのは輸出である。輸出数量は07年前半は一時マイナスに落ち込んだが、後半は期を追って伸びを高め08年2月までは高い伸びを続けている。
米国経済は、低所得者向け住宅ローン(サブプライム)の焦げ付きに端を発した信用不安、住宅投資調整もあり、減速している。日本からの米国向け輸出も減少に向かっている。しかし、米国経済の世界に占める地位がかつてに比べ大幅に低下している。世界経済は、アジアなど新興国主導で過去最高の年率5%程度の成長を維持しているとみられる。

(3)内需に逆風も加わる
 そもそも今回の景気循環の最大の特徴は、海外経済の高い成長を受けた好調な輸出と大企業製造業の生産活動が活発な半面、内需が停滞、非製造業も景況が低迷、景気が2極化していることである。
内需をめぐっては、07年に大きく3つの逆風が吹いたと考えている。
 第1は、耐震偽装問題への対応である改正建築基準法施行(6月)に伴い建築確認審査が厳格化したことで、住宅建設及び企業の建設投資(設備投資の4分の1)を含めて、建築着工が大幅に減少していることだ。住宅着工戸数(年率)は、それまでの120〜130万戸の水準から、7-9月は80万戸に落ち込んだ。
 第2は、原油価格を始め資源価格が上昇しており、国内物価にはね返り、企業の収益を圧迫しつつあることだ。企業収益は「法人企業統計」ベースの全産業経常利益は7−9月前年同期比▲0.7%、10-12月▲1.5%のマイナスに落ち込んだ。その主要因は、輸入原材料価格の上昇で、コストのうち変動費部分がアップしたことである。収益の悪化は、設備投資を含む企業行動を抑制する方向で働くのは当然である。
 第3は、株価の軟調だ。株価は6月下旬以降、米国サブプライムローン問題をきっかけに下げに向かい、11月22日には日経平均14,670円の年初来安値を記録、年明け後も下げ止らず3月には一時1万2000円も下回った。株価の下げは、企業、消費者を含めて景況感を冷やす。
 元々、今回の景気過程では、個人消費が低迷し、内需に力強さが欠けていたところに上記マイナス材料が加わり、一度反転しかけた景気の上昇力が損なわれつつあるという状況であろう。

2. 今後の展望−08年秋までは堅調

(1)輸出も勢いが弱まるが増加  
  今後を考えるのに、かぎとなるのは輸出がどうなるか。近年の日本経済は輸出依存を強め、景気も輸出動向に左右され面が非常に大きい。中国をはじめとする巨大新興国をけん引役とする世界経済の高い成長が、日本産業に対し需要増加の恩恵をもたらしていることである。つまり、インフラ基盤整備のための資本財、自動車、ハイテク関連製造装置などの供給力・競争力で優位に立ち、新興国の成長のメリットが最も及ぶ国となっている。

 問題は米国経済の減速の影響、および北京五輪後の中国経済にブレーキがかかるかどうかであろう。
  米国サブプライムローン問題とは、結局住宅バブルの崩壊が一番弱い部分に現出したということである。その影響は@住宅建設の抑制A金融機関経営への打撃 B家計消費へのマイナス−などが考えられ、小さいとはいえない。
米国経済は2007年の2%強の成長、2008年は1%台半ば程度に減速すると
の見方が主流になっている。この場合08年半ばにマイナス成長、景気は後退局面に陥る可能性がある。米国の減速は、世界経済にも波及する。
  ただ、米国住宅バブルの調整はすでに一巡しつつあるとの見方もあり、仮にリセッション入りしても、従来の後退期間は平均10ヶ月程度、秋口からは回復に転じるかもしれない。
  中国経済の行方については、北京五輪後経済が落ち込むかどうかはわからないが少なくともある程度減速することは避けられないであろう。しかし、現状の中国経済にとって北京を中心とする五輪投資の比重はそれほど大きくない。五輪の反動で、成長が大きく減速するとは考えにくい。
  IMFの見通しによると、世界経済は06年5.0%、07年4.9%と高い成長を達成した後、08年は鈍化するが4%程度は維持できそうだ。
すでに見たように、日本の輸出は足元で再び増勢を強めつつある。08年になり徐々に伸びが低下していくような展開が予想されるものの、輸出が急減して景気の足を引っ張る事態は当面は避けられそうだ。

(2)内需、悪材料もあるが、堅調に 
  しかし、日本経済の方向を決定するのはやはり国内の需要(内需)である。
家計の所得動向を見ると、名目賃金は07年になりマイナスに落ち込んでいるが、働く人の頭数(雇用者数)は増加を続けているため、家計全体の所得はかろうじてプラスを維持してはいる。
各種調査で消費者マインドも悪化。また、世界的な資源価格上昇が生活関連価格の上昇に波及しており、消費をめぐる環境はよくないが、販売関連統計は比較的堅調を維持している。中でも、注目すべきは近年、趨勢的に減少してきた自動車販売が、足元で反転増加の兆しを見せていることだ。08年4月の新車(登録者)販売は前年比6.9%増加した。
住宅需要は、マンション販売が用地価格と建築費の上昇による単価の上昇で落ち込んでいるが、先に見た内需にかかる3つの悪材料のうち、@の建築確認審査の遅れは正常化しつつあり、住宅着工は回復してきている(08年3月は落ち込んだが、これはやはり曜日要因とみられる)。

 一方企業部門を見ると、企業収益は07年後半に減益に転じた。しかし、その幅はわずかで、また利益率の水準はなお高い。Aの原油価格上昇の収益圧迫はしばらく続くが、大企業の連結決算は海外の売上高、利益を含むため好調を維持できる。設備の稼働率もハイレベルにあるため、設備投資意欲は堅調である。企業需要も今後急減するような状況にはない。
 輸入物価が上昇して、いわゆる対外交易条件が悪化、それが企業の収益や家計の所得を蝕み始めている。さらには世界的金融市場の動揺・株価下落に伴う心理的萎縮も重なり、停滞感が強まってはいるが、実体的には底堅く、明確な調整過程に入ったわけではない。

以上のように、内需をめぐる環境は今のところ、良好とはいえないが、底堅く推移している。先行きをどう考えるべきか。
経済には目に見えない(与えられた材料だけからは判断できない)部分が常にある。筆者は、内需の変動は銀行による信用供与(貸し出しなど)、マネーサプライの供給に左右されるという考え方から、独自の景気予測法を開発している。
3月までの統計を用いて試算したところによると、景気には、すでに06年末から上向きのエネルギーが働いており、その力はそれほど強いものではないが、07年末までは拡大を続けていた。
07年後半から景気の落ち込みが止まったのも、輸出の増加に、マネーサプライ要因が加わったものとみられる。08年秋口までは景気には上昇モメンタムが働くはずである。それにも関わらず、足元で景気が明確に浮揚できないのは、上記3要因を含め、外的マイナス要因が強まったことによる。
今後については、各要因の綱引きとなるが、少なくとも年前半は景気は悪化することなく、むしろ堅調に推移することになるのではないかというのが、筆者の予測である。

3. 今後の株価−年半ばまでは上昇

株価は日経平均株価でみて、07年2月には、1万8,000円台(高値は2月26日の18,300円)を記録したが、2月末、中国上海市場の下げをきっかけに急落。その後戻して6月初旬に18,000円台を回復したが、年初来高値は超えられず、下旬から米国サブプライムローン問題から下げに転じ、11月には15,000円を割り込み、年明け後もさらに下げ、3月17日には11,691円の安値を記録。ただ、その後は戻して、5月初めで1万4,000円台を回復している。
筆者は、実体景気の変動にマネーサプライ要因が働くと考えているが、株価に対しては実体景気より早いタイミングでマネー要因が効く。そのため、マネー要因は07年半ばからに株価押し上げに作用していたはずである。今回は、グローバルマネーの国内株への影響が大きく、筆者の予測では上昇に移るはずの局面で逆に下げるという展開になった。以前に比べ、国際金融情勢の国内株式市場に与える影響が格段に強まっていることに留意しなければいけないが、サブプライムローン問題に端を発した世界的信用不安が落ち着けば、平均株価は現状、上昇軌道に移りつつある段階とみる。もうしばらく上昇は可能であろう。

 ただ、残念ながら、筆者の開発した予測モデルによれば、足元で反転、上昇しつつある株価も08年半ば頃(6〜7月)にピークが訪れる公算が大きい。
ただし、@実勢以上の安値からの戻しのエネルギーが働く可能性もある、A国際金融情勢の動揺がおさまれば世界的株価上昇が起きる可能性がある―ことなど、不確定ではあるが。

(以上は、筆者の個人的見解です。また経済には必ず不確定要素が伴い、予測の部分は、当然のことながら100%保証できるものではありません。投資は各自の判断でお願いいたします)。

金子 豊治郎 
1950年 埼玉県生まれ
74年 一橋大学経済学部卒業、日本経済新聞社入社。
91年 日本経済研究センター出向、短期予測チーム、中期予測チーム主査
2000年より2006年8月まで 同主任研究員。
現在 東上沿線新聞代表
2001年より2005年東京工業大学客員教授(経済予測論)
2004年より明星大学非常勤講師(景気変動論)を兼務。

著書
 『揺るぎなき日本経済』(共著、日本経済新聞社、92年)
 『日本経済フエアプレー宣言』(共著、日本経済新聞社、93年)
 『日本経済・穏やかなる復活』(日本経済新聞社、94年)
 『社会保障改革の経済学』(共著、東洋経済新報社、03年)
 『新景気変動論』(大学教育出版、05年)など。

「東上沿線物語」(東上沿線新聞発行) http://www.tojoshinbun.com/
景気・株価予測の詳細 http://homepage3.nifty.com/yosoku/


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