2.
今後の展望−08年秋までは堅調
(1)輸出も勢いが弱まるが増加
今後を考えるのに、かぎとなるのは輸出がどうなるか。近年の日本経済は輸出依存を強め、景気も輸出動向に左右され面が非常に大きい。中国をはじめとする巨大新興国をけん引役とする世界経済の高い成長が、日本産業に対し需要増加の恩恵をもたらしていることである。つまり、インフラ基盤整備のための資本財、自動車、ハイテク関連製造装置などの供給力・競争力で優位に立ち、新興国の成長のメリットが最も及ぶ国となっている。
問題は米国経済の減速の影響、および北京五輪後の中国経済にブレーキがかかるかどうかであろう。
米国サブプライムローン問題とは、結局住宅バブルの崩壊が一番弱い部分に現出したということである。その影響は@住宅建設の抑制A金融機関経営への打撃 B家計消費へのマイナス−などが考えられ、小さいとはいえない。
米国経済は2007年の2%強の成長、2008年は1%台半ば程度に減速すると
の見方が主流になっている。この場合08年半ばにマイナス成長、景気は後退局面に陥る可能性がある。米国の減速は、世界経済にも波及する。
ただ、米国住宅バブルの調整はすでに一巡しつつあるとの見方もあり、仮にリセッション入りしても、従来の後退期間は平均10ヶ月程度、秋口からは回復に転じるかもしれない。
中国経済の行方については、北京五輪後経済が落ち込むかどうかはわからないが少なくともある程度減速することは避けられないであろう。しかし、現状の中国経済にとって北京を中心とする五輪投資の比重はそれほど大きくない。五輪の反動で、成長が大きく減速するとは考えにくい。
IMFの見通しによると、世界経済は06年5.0%、07年4.9%と高い成長を達成した後、08年は鈍化するが4%程度は維持できそうだ。
すでに見たように、日本の輸出は足元で再び増勢を強めつつある。08年になり徐々に伸びが低下していくような展開が予想されるものの、輸出が急減して景気の足を引っ張る事態は当面は避けられそうだ。
(2)内需、悪材料もあるが、堅調に
しかし、日本経済の方向を決定するのはやはり国内の需要(内需)である。
家計の所得動向を見ると、名目賃金は07年になりマイナスに落ち込んでいるが、働く人の頭数(雇用者数)は増加を続けているため、家計全体の所得はかろうじてプラスを維持してはいる。
各種調査で消費者マインドも悪化。また、世界的な資源価格上昇が生活関連価格の上昇に波及しており、消費をめぐる環境はよくないが、販売関連統計は比較的堅調を維持している。中でも、注目すべきは近年、趨勢的に減少してきた自動車販売が、足元で反転増加の兆しを見せていることだ。08年4月の新車(登録者)販売は前年比6.9%増加した。
住宅需要は、マンション販売が用地価格と建築費の上昇による単価の上昇で落ち込んでいるが、先に見た内需にかかる3つの悪材料のうち、@の建築確認審査の遅れは正常化しつつあり、住宅着工は回復してきている(08年3月は落ち込んだが、これはやはり曜日要因とみられる)。
一方企業部門を見ると、企業収益は07年後半に減益に転じた。しかし、その幅はわずかで、また利益率の水準はなお高い。Aの原油価格上昇の収益圧迫はしばらく続くが、大企業の連結決算は海外の売上高、利益を含むため好調を維持できる。設備の稼働率もハイレベルにあるため、設備投資意欲は堅調である。企業需要も今後急減するような状況にはない。
輸入物価が上昇して、いわゆる対外交易条件が悪化、それが企業の収益や家計の所得を蝕み始めている。さらには世界的金融市場の動揺・株価下落に伴う心理的萎縮も重なり、停滞感が強まってはいるが、実体的には底堅く、明確な調整過程に入ったわけではない。
以上のように、内需をめぐる環境は今のところ、良好とはいえないが、底堅く推移している。先行きをどう考えるべきか。
経済には目に見えない(与えられた材料だけからは判断できない)部分が常にある。筆者は、内需の変動は銀行による信用供与(貸し出しなど)、マネーサプライの供給に左右されるという考え方から、独自の景気予測法を開発している。
3月までの統計を用いて試算したところによると、景気には、すでに06年末から上向きのエネルギーが働いており、その力はそれほど強いものではないが、07年末までは拡大を続けていた。
07年後半から景気の落ち込みが止まったのも、輸出の増加に、マネーサプライ要因が加わったものとみられる。08年秋口までは景気には上昇モメンタムが働くはずである。それにも関わらず、足元で景気が明確に浮揚できないのは、上記3要因を含め、外的マイナス要因が強まったことによる。
今後については、各要因の綱引きとなるが、少なくとも年前半は景気は悪化することなく、むしろ堅調に推移することになるのではないかというのが、筆者の予測である。
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