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元気埼玉 > マネー > エコノミスト・金子豊治郎が語る「景気・株価の見方」 > バックナンバー
マネー
金子豊治郎の「景気と株価の見方」(2007年12月4日) 

<ポイント>

  • 景気は足元で逆風が吹き、再び足踏みを始めており、しばらく停滞する。
  • 海外要因で下落した平均株価は、今後は緩やかに戻し、08年春に日経平均18,000円をうかがう。
    (前回11月と基本判断をやや弱気に修正しました)

1.足元の景気−再び軟化の兆し

(1)年後半から指標改善に向かうが足元で再屈折
景気は、政府の公式判断としては、2002年1月を底とする、戦後最長の上昇局面にあるが、その間上昇の止まるいわゆる「踊り場」を何度も繰り返してきた。直近でも07年に入り足踏み状態に陥った。景気を最も素直に示す統計である鉱工業生産指数を見ると、06年は4.8%増加したが、07年になり鈍化、6月は前年同月比1.1%増となった。設備投資の先行指標である機械受注は同月に同▲17.9%と大幅減少、景気後退色が強まった。
 その後は、夏から秋にかけて生産指数をはじめ景気指標がやや改善に向かった。景気の局面を判断するのに使われる指標に、景気動向指数(DI)がある。景気と関連が強い11の指標を集め、そのうち改善しているものの比率を示した総合的指標であり、4月から8月まで連続して50%を超した。
実体景気は一時の足踏みを脱し、再び上向きつつあるとみられたが、9月になり生産指数は前月比で落ち込み、前年比の伸びも0.8%に縮まった。景気は再び軟化の兆しをみせている。

(2)アジア主導で輸出は持ち直すが
 年後半からの景気再加速をリードしたのは輸出である。輸出数量は前半は一時マイナスに落ち込んだが、後半は期を追って伸びを高め10月は前年同月比14.9%も増えた。
米国経済は、低所得者向け住宅ローン(サブプライム)の焦げ付きをめぐ
る信用不安もあり、減速している。日本からの米国向け輸出も減少に向かっている。しかし、米国経済の世界に占める地位がかつてに比べ大幅に低下している。世界経済は、アジアなど新興国主導で過去最高の年率5%程度の成長を維持しているとみられ、米国が多少落ち込んでも日本の輸出が大きなマイナスをこうむることはない。

(3)内需をめぐる逆風
 足元での景気停滞感を引き起こしているのは、内需をめぐる要因である。私は、大きく
3つの逆風が吹き始めたと考えている。
 第1は、耐震偽装問題への対応である改正建築基準法施行(6月)に伴い建築確認審査が厳格化したことで、住宅建設及び企業の建設投資を含めて、建築着工が大幅に減少していることだ。住宅、建設投資自体の経済に占める比率はそれほど大きくないが、関連業界が幅広く、また多くの場合金融(住宅ローン)が付随するためマネーサプライの縮小に働き、景気への影響は大きい。
 第2は、原油価格を始め資源価格が上昇しており、国内物価にはね返り、企業の収益を圧迫しつつあることだ。企業収益は「法人企業統計」ベースの7−9月の全産業経常利益は前年同期比▲0.7%のマイナスに落ち込んだ。その主要因は、輸入原材料価格の上昇で、コストのうち変動費部分がアップしたことである。収益の悪化は、設備投資を含む企業行動を抑制する方向で働くのは当然である。
 第3は、株価の軟調だ。株価は6月下旬以降、米国サブプライムローン問題をきっかけに下げに向かい、11月22日には日経平均14,670円の年初来安値を記録した。株価の下げは、企業、消費者を含めて景況感を冷やす。
 元々、今回の景気過程では、個人消費が低迷し、内需に力強さが欠けていたところに上記マイナス材料が加わり、一度反転しかけた景気の上昇力が損なわれつつあるという状況であろう。

2.今後の展望−08年半ばまでは横ばい
(1)輸出も勢いが弱まるか
 今後を考えるのに、一つかぎとなるのは輸出がどうなるか。近年の日本経済は輸出依存を強め、景気も輸出動向に左右され面が非常に大きい。
 この背景には、第1に為替レートが円安基調で推移し、日本製品の価格競争力が以前に比べ強化されていることがある。円レートは、2006年初以降1ドル110円台を中心に安定的に推移している。足元でドル安・円高に振れつつあるが、110円を超して大幅に円高が進む事態にはなっていない。日本企業の輸出採算レートはアンケート調査などによると106円程度であり、110円台なら十分余力がある。
 第2は、中国をはじめとする新興国の成長が、日本産業に対し需要増加の恩恵をもたらしていることである。つまり、インフラ基盤整備のための資本財、自動車、ハイテク関連製造装置などの供給力・競争力で優位に立ち、新興国の成長のメリットが最も及ぶ国となっている。
 問題は米国経済の減速の影響、および北京五輪後の中国経済にブレーキがかかるかどうかであろう。
 米国サブプライムローン問題とは、結局住宅バブルの崩壊が一番弱い部分に現出したということである。その影響は@住宅建設の抑制:住宅着工は10年ぶりの低水準まで落ちている A金融機関経営への打撃:米欧銀行の巨額損失が次々と明らかになっている B家計消費へのマイナス:従来住宅ローンの一部が消費に回っていた −などが考えられ、小さいとはいえない。
 米国FRBは、8月に公定歩合引き下げ、9月、11月とFFレートを引き下げるなど、対応しているが、米国経済は2007年の3%近い成長、2008年は2%程度に減速するとの見方が主流になっている。
 中国経済の行方については、北京五輪後経済が落ち込むかどうかはわからないが少なくともある程度減速することは避けられないであろう。
すでに見たように、輸出は足元で再び増勢を強めつつあるが、08年になり徐々に伸びが低下していくような展開が予想される。とはいえ、輸出が急減して景気の足を引っ張る事態は当面は避けられそうだ。

(2)内需、悪材料もあるが、堅調に
 しかし、日本経済の方向を決定するのはやはり国内の需要(内需)である。
先に見た内需にかかる3つの悪材料はどうなるだろうか。@の建築確認審査の遅れはいずれ正常化するかもしれないが、今までの着工の減少の影響は尾をひく、Aの原油価格上昇の収益圧迫はしばらく続くだろう。
そもそも、足元の名目賃金は07年になりマイナス。パートや派遣の時給は増加しているが、正社員の給与が下落している。これは団塊世代の退職による面もあるといわれるが、中小企業の景況が悪く賃金抑制を続けていることが主たる背景であろう。賃金伸び悩みから消費関連需要が弱いため、中小企業の景況感はさらに悪化傾向にある。
以上のように、内需をめぐる環境も今のところ、良好とはいえない。ただ、経済には目に見えない(与えられた材料だけからは判断できない)部分が常にある。筆者は、内需の変動は銀行による信用供与(貸し出しなど)、マネーサプライの供給に左右されるという考え方から、独自の景気予測法を開発している。
9月までの統計を用いて試算したところによると、景気には、すでに昨年末から上向きのエネルギーが働いており、その力はそれほど強いものではないが、拡大を続けている。
今年後半から景気が足踏みから脱したのも、輸出の増加に、マネーサプライ要因が加わったものとみられる。08年前半までは景気には上昇モメンタムが働くはずである。それにも関わらず、足元で景気屈折の兆候が見えるのは、上記3要因を含め、マイナス要因が強まったことによる。
今後については、各要因の綱引きとなるが、少なくとも年前半は景気はそれほど悪化することなく、堅調に推移することになるのではないかというのが、筆者の予測である。

(3)円高は経済にプラス
 一部に為替が若干円高に振れていることが、景気を冷やし、株価を下げる要因となっているとの説がある。
そもそも実質実効レートで見ると、円は足元やや円高だが、トレンドは1999年をピークに一貫して円安であり、足元の水準は、プラザ合意前の1980年代前半と同じである。過去の円高をすべて取り返し、歴史的には円安のレベルにあり、多少の円高でも決して「高い」水準ではないことを認識しておく必要がある。
 とはいえ円高が進めば、元の時点との比較の上で、輸出数量を減らし、輸出企業の収益にマイナスに働くことは間違いない。サブプライム問題をきっかけに、世界をかけめぐる過剰流動性、巨額の投資マネーが行き場を失っている。ドルからユーロに、さらに金、原油などの商品にシフト、結果的に円高が進む。景気減速に対してFRBが利下げを続ければ、日米金利差が縮まれば、円キャリートレード巻き戻しがさらに進み、これも円高要因となる。08年に円高が進む可能性はかなりある。
 しかし、円高は日本から出たり入ったりする商品の価格変化の上では、輸入品価格をより下げ、日本に利益をもたらす(交易条件効果)。現状、原油価格の上昇による仕入れコストの上昇が販売価格に転嫁できず、収益が圧迫されている企業にとっては恩恵となるはずである。
 また、円高が進むとは海外から流入する資本(おカネ)が出ていく資本を上回っていることを意味する。すなわち、海外から国内のモノや金融商品に対する購買力が移転してきていることと同じであり、景気や株価にプラスに働くというのが筆者の考えである。円高をこわがる必要はなく、むしろ歓迎し、投資のチャンスと見るべきである。

3.今後の株価−緩やかに上昇、08年春に18,000円
株価は日経平均株価でみて、07年2月には、1万8,000円台(高値は2月26日の18,300円)を記録したが、2月末、中国上海市場の下げをきっかけに急落。その後戻して6月初旬に18,000円台を回復したが、年初来高値は超えられず、下旬から米国サブプライムローン問題から下げに転じ、11月には15,000円を割り込み、年初来安値を記録、12月段階でも15,000円台と低迷している。
今回の下げの背景には、米国サブプライムローン問題を背景とする世界的な信用不安があるわけだが、年初来安値をつけたまでの年初からの上昇率は世界の株式市場で最低のレベル。世界でもっともパフォーマンスの悪い市場となっている。今回の下げもそうであるように、日本株は、米国市場、外国人投資家で左右され、他国追随の萎縮した市場となっているようだ。日本経済・市場のファンダメンタルズに反応できなくなりつつあり、国内経済要因にもとづく株価予測はますます困難になっている。
筆者は、実体景気の変動にマネーサプライ要因が働くと考えているが、株
価に対しては実体景気より早いタイミングでマネー要因が効く。そのため、マネー要因はすでに株価押し上げに作用しているはずである。平均株価は現状、やや長めのスパンでみれば、膠着状態を脱け出し、上昇軌道に移りつつある段階とみる。07年末段階では、そのような展開になっていないが、言い訳になるが、サブプライムローン問題に端を発した世界的信用不安と日本市場の構造的萎縮が筆者の株価予測が現在までのところはずれた事情ではないかと考えている。
市場が本当に「死んだ」のかどうかまだ見極めできない。今後復活できるなら、足元で下落した株価も、今後はトレンドとしては上昇に向かう可能性が高いとみている。あえて株価レベルを試算すれば、日経平均株価は緩やかに上昇、07年末に1万7,000円、08年春に18,000万円をうかがう展開が予想される。

(以上は、筆者の個人的見解です。また経済には必ず不確定要素が伴い、予測の部分は、当然のことながら100%保証できるものではありません。投資は各自の判断でお願いいたします)。

金子 豊治郎 
1950年 埼玉県生まれ
74年 一橋大学経済学部卒業、日本経済新聞社入社。
91年 日本経済研究センター出向、短期予測チーム、中期予測チーム主査
2000年より2006年8月まで 同主任研究員。
現在 東上沿線新聞代表
2001年より2005年東京工業大学客員教授(経済予測論)
2004年より明星大学非常勤講師(景気変動論)を兼務。

著書
 『揺るぎなき日本経済』(共著、日本経済新聞社、92年)
 『日本経済フエアプレー宣言』(共著、日本経済新聞社、93年)
 『日本経済・穏やかなる復活』(日本経済新聞社、94年)
 『社会保障改革の経済学』(共著、東洋経済新報社、03年)
 『新景気変動論』(大学教育出版、05年)など。

「東上沿線物語」(東上沿線新聞発行) http://www.tojoshinbun.com/
景気・株価予測の詳細 http://homepage3.nifty.com/yosoku/

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