1.足元の景気−再び軟化の兆し
(1)年後半から指標改善に向かうが足元で再屈折
景気は、政府の公式判断としては、2002年1月を底とする、戦後最長の上昇局面にあるが、その間上昇の止まるいわゆる「踊り場」を何度も繰り返してきた。直近でも07年に入り足踏み状態に陥った。景気を最も素直に示す統計である鉱工業生産指数を見ると、06年は4.8%増加したが、07年になり鈍化、6月は前年同月比1.1%増となった。設備投資の先行指標である機械受注は同月に同▲17.9%と大幅減少、景気後退色が強まった。
その後は、夏から秋にかけて生産指数をはじめ景気指標がやや改善に向かった。景気の局面を判断するのに使われる指標に、景気動向指数(DI)がある。景気と関連が強い11の指標を集め、そのうち改善しているものの比率を示した総合的指標であり、4月から8月まで連続して50%を超した。
実体景気は一時の足踏みを脱し、再び上向きつつあるとみられたが、9月になり生産指数は前月比で落ち込み、前年比の伸びも0.8%に縮まった。景気は再び軟化の兆しをみせている。
(2)アジア主導で輸出は持ち直すが
年後半からの景気再加速をリードしたのは輸出である。輸出数量は前半は一時マイナスに落ち込んだが、後半は期を追って伸びを高め10月は前年同月比14.9%も増えた。
米国経済は、低所得者向け住宅ローン(サブプライム)の焦げ付きをめぐ
る信用不安もあり、減速している。日本からの米国向け輸出も減少に向かっている。しかし、米国経済の世界に占める地位がかつてに比べ大幅に低下している。世界経済は、アジアなど新興国主導で過去最高の年率5%程度の成長を維持しているとみられ、米国が多少落ち込んでも日本の輸出が大きなマイナスをこうむることはない。
(3)内需をめぐる逆風
足元での景気停滞感を引き起こしているのは、内需をめぐる要因である。私は、大きく
3つの逆風が吹き始めたと考えている。
第1は、耐震偽装問題への対応である改正建築基準法施行(6月)に伴い建築確認審査が厳格化したことで、住宅建設及び企業の建設投資を含めて、建築着工が大幅に減少していることだ。住宅、建設投資自体の経済に占める比率はそれほど大きくないが、関連業界が幅広く、また多くの場合金融(住宅ローン)が付随するためマネーサプライの縮小に働き、景気への影響は大きい。
第2は、原油価格を始め資源価格が上昇しており、国内物価にはね返り、企業の収益を圧迫しつつあることだ。企業収益は「法人企業統計」ベースの7−9月の全産業経常利益は前年同期比▲0.7%のマイナスに落ち込んだ。その主要因は、輸入原材料価格の上昇で、コストのうち変動費部分がアップしたことである。収益の悪化は、設備投資を含む企業行動を抑制する方向で働くのは当然である。
第3は、株価の軟調だ。株価は6月下旬以降、米国サブプライムローン問題をきっかけに下げに向かい、11月22日には日経平均14,670円の年初来安値を記録した。株価の下げは、企業、消費者を含めて景況感を冷やす。
元々、今回の景気過程では、個人消費が低迷し、内需に力強さが欠けていたところに上記マイナス材料が加わり、一度反転しかけた景気の上昇力が損なわれつつあるという状況であろう。
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| 3.今後の株価−緩やかに上昇、08年春に18,000円
株価は日経平均株価でみて、07年2月には、1万8,000円台(高値は2月26日の18,300円)を記録したが、2月末、中国上海市場の下げをきっかけに急落。その後戻して6月初旬に18,000円台を回復したが、年初来高値は超えられず、下旬から米国サブプライムローン問題から下げに転じ、11月には15,000円を割り込み、年初来安値を記録、12月段階でも15,000円台と低迷している。
今回の下げの背景には、米国サブプライムローン問題を背景とする世界的な信用不安があるわけだが、年初来安値をつけたまでの年初からの上昇率は世界の株式市場で最低のレベル。世界でもっともパフォーマンスの悪い市場となっている。今回の下げもそうであるように、日本株は、米国市場、外国人投資家で左右され、他国追随の萎縮した市場となっているようだ。日本経済・市場のファンダメンタルズに反応できなくなりつつあり、国内経済要因にもとづく株価予測はますます困難になっている。
筆者は、実体景気の変動にマネーサプライ要因が働くと考えているが、株
価に対しては実体景気より早いタイミングでマネー要因が効く。そのため、マネー要因はすでに株価押し上げに作用しているはずである。平均株価は現状、やや長めのスパンでみれば、膠着状態を脱け出し、上昇軌道に移りつつある段階とみる。07年末段階では、そのような展開になっていないが、言い訳になるが、サブプライムローン問題に端を発した世界的信用不安と日本市場の構造的萎縮が筆者の株価予測が現在までのところはずれた事情ではないかと考えている。
市場が本当に「死んだ」のかどうかまだ見極めできない。今後復活できるなら、足元で下落した株価も、今後はトレンドとしては上昇に向かう可能性が高いとみている。あえて株価レベルを試算すれば、日経平均株価は緩やかに上昇、07年末に1万7,000円、08年春に18,000万円をうかがう展開が予想される。
(以上は、筆者の個人的見解です。また経済には必ず不確定要素が伴い、予測の部分は、当然のことながら100%保証できるものではありません。投資は各自の判断でお願いいたします)。
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