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| 金子豊治郎の「景気と株価の見方」(2007年8月) |
<ポイント>
- 景気は2007年1月以降緩やかな後退局面(あるいは「踊り場」)にあり、秋口から反転するとみられる。
- .7月下旬から海外要因で下落した平均株価は、今後上昇軌道に戻るとみられる。
(前回7月と基本判断は変えていないが、実体経済、特に内需の減退が重く、景気の反転上昇は秋口にずれ込みそうだ)
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足元の景気−またまたネガティブなサイン
前回7月の本欄で、年初来下り坂にあった景気が5月頃から再び反転、上昇する兆しを見せ、今回の調整は軽微に終わる可能性がある、と書いた。ところがその後1ヶ月間で得られた情報は、必ずしも楽観説を支持するものではなかった。
第1は、6月の機械受注統計だ。機械受注とは、機械の製造メーカーが、一般の企業から受注した金額を集計したもので、いわゆる設備投資の先行指標とされている。実勢をよく表す、「船舶・電力を除く民間企業からの受注額合計」は6月は前年同月比17.9%減と、大幅に減少したのだ。
第2は、株価の下落だ。日経平均株価は7月20日まで1万8000円台にあったが、その後下げに転じ、8月半ば現在で1万6000円台まで落ちている。この背景には、米国の低所得者向け住宅ローン(サブプライム)の焦げ付きをめぐる世界的な信用不安があるとされる。
ただ、景気指標はむしろ実体景気の持ち直しを示している。景気の局面を判断するのに使われる指標に、景気動向指数(DI)一致指数は4月から6月まで連続して50%を超した。先行きの景気を示す先行指数も、昨年11月から5月まで50%を下回り続けたが、6月は50%を超した。以上を素直に解釈すれば、景気は再び上昇に向かっているわけだ。
足元の景気堅調の背景には、輸出の増加があるようだ。輸出を物量ベースでとらえた輸出数量指数は、昨年9月以降鈍化、今年になり2月からはほぼ横ばいに落ち込んだ。特に米国向けが減少していた。ところが5月が6.2%増、6月が5.9%増と、ら再び伸びが高まり始めた。中国はじめアジアの旺盛な需要が背景にある。近年の生産動向は輸出にリードされている面があり、足元の景気の底堅さも輸出動向に負うところが大だ。
しかし、機械受注の減少に加えて、○内需のうち景気に最も敏感と目される住宅着工が減少傾向にある、○輸入数量が減少している、○銀行貸し出しが鈍化している、ことなどから、内需は調整過程にあるとみてよさそうだ。
以上から、年初から軽い後退局面に入っていた景気は、年半ばにして反転の
兆候が出ているが、これは輸出だけに依存した動きで持続性は疑問だ。筆者は前回予測で実体景気の反転上昇はやや早まるとの述べたが、内需動向からみて夏の段階でも依然調整が続いている可能性が強まっている。
経済を見るには、あまりに短期的な動きに目を奪われてはいけない。前回の予測の反省点である。 |
今後の展望−景気は秋から再び上昇軌道へ
今後を考えるのに、一つかぎとなるのは輸出がどうなるか。すでに見たように、足元の景気はひとえに輸出に支えられている。そのため、中国をはじめとする世界経済動向が注目点だ。
ただ、日本経済の方向を決定するのはやはり国内の需要(内需)である。輸
出が多少増えても、内需が落ち込めば、景気は後退を避けられない。筆者は、
内需の変動は銀行による信用供与(貸し出しなど)、マネーサプライの供給に左
右されという考え方から、独自の景気予測法を開発している。
5、6月までの統計を用いて景気の先行きを試算したところによると、景気
には、すでに昨年末から上向きのエネルギーが働いており、しかも少しずつ、かつ上下しながらだが、その力は強まってきている。今後は輸出の下げ止まりに、マネーサプライ要因が上向きに変化し、景気は反転、上昇する可能性が大きい。その時期は、秋口からとみられる。
ただ、現段階で入手可能な材料から判断して、景気が上昇に向かっても、そ
のテンポは非常に緩やかになる、あるいは一進一退の展開になる可能性が大きいとみられる。 |
| 今後の株価−上昇に向かう可能性
以上のように実体景気が推移すると、株価はどうなるだろうか。
株価は昨年半ばから上昇傾向をたどり、日経平均株価でみて、今年2月には、
昨年4月の高値(1万7,563円)を超え、1万8,000円台(高値は2月26日の18,300円)を記録したが、2月末、中国上海市場の下げをきっかけに急落。その後戻して6月初旬に18,000円台を回復したが、年初来高値は超えられず、7月下旬から下げに転じ、8月半ば現在で1万6000円台まで落ちている。この背景には、米国の低所得者向け住宅ローン(サブプライム)の焦げ付きをめぐる世界的な信用不安があるとされる。
株価の変動要因には様々あり、今回のような海外要因は予測が難しいが、株
価は平均株価で見れば、経済指標の一つであり、通常、実体景気に対して先行しながら連動するパターンをとる。筆者は、実体景気の変動にマネーサプライ要因が働くと考えているが、株価に対しては実体景気より早いタイミングでマネー要因が効く。そのため、マネー要因はすでに株価押し上げに作用しているはずである。
平均株価は基本的なモメンタムとしては現状、上昇軌道に移りつつある段階とみる。米国経済の動揺からなどから足元で足踏み状態にあるが、秋以降徐々に戻していく可能性が高いとみている。
(以上は、筆者の個人的見解です。また経済には必ず不確定要素が伴い、予測の部分は、当然のことながら100%保証できるものではありません。投資は各自の判断でお願いいたします)。
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金子 豊治郎
1950年 埼玉県生まれ
74年 一橋大学経済学部卒業、日本経済新聞社入社。
91年 日本経済研究センター出向、短期予測チーム、中期予測チーム主査
2000年より2006年8月まで 同主任研究員。
現在 東上沿線新聞代表
2001年より2005年東京工業大学客員教授(経済予測論)
2004年より明星大学非常勤講師(景気変動論)を兼務。
著書
『揺るぎなき日本経済』(共著、日本経済新聞社、92年)
『日本経済フエアプレー宣言』(共著、日本経済新聞社、93年)
『日本経済・穏やかなる復活』(日本経済新聞社、94年)
『社会保障改革の経済学』(共著、東洋経済新報社、03年)
『新景気変動論』(大学教育出版、05年)など。
「東上沿線物語」(東上沿線新聞発行) http://www.tojoshinbun.com/
景気・株価予測の詳細 http://homepage3.nifty.com/yosoku/ |