| 今回の景気の特徴−中期的上昇軌道
景気にはそのボトム(谷)と、ピーク(山)があるが、直前の谷は2002年1月であったと、これは公式に認定されている。2002年2月から上りに入り、筆者は上で述べたように、景気は年明け後下方に転換した可能性が高いとみているが、それでも今回の景気上昇は59ヶ月続いたことになる。これは異例の長さである。これまで戦後で一番上昇期間の長かった景気は「いざなぎ景気」(1965年11月〜70年7月の57ヶ月)であり、今回の景気は「いざなぎ超え」を果たしたことになる。
今回の景気上昇は長続きしたが、そのペースは非常に緩やかであった。経済全体の生産(=支出)を示すGDP(国内総生産)の成長率は実質ベースで2002年度から2005年度まで各年1.1%〜2.4%と低めだ。しかもデフレ(物価の下落傾向)のため、名目の金額ベースでは各年度とも1%以下の成長にとどまっている。景気上昇が力強さに欠け、実感がうすいのはこのためだ。
また、上昇がジグザグをたどった。すでに2003年前半、2004年後半から2005年前半にかけてと、2度の「踊り場」を経験している。「踊り場」とは足踏み状態だが、景気の定義をより細かく厳密にすれば、軽い後退局面であり、景気上昇が継続していたわけではないことになる。株価も、2002年以降で上下している。
もう一つ、今回の景気上昇の特徴は、推進力がもっぱら企業部門であったことであるアジアを中心とする世界需要に引っ張られて輸出が増加、輸出による売り上げ増で収益が改善した企業が設備投資を増やす形で拡大した。この間、個人消費など家計企業は盛り上がりに欠けた。
以上のような今回の景気の特徴の背景には、以下のような企業をめぐる環境変化、企業の姿勢があった。
第1に、企業にとって90年代の長期低迷期に、成長の足かせとなっていた要因が解消に向かったことだ。
すなわち、
- 設備不足状況の現出:過去の投資調整と需要の回復で、一部ではむしろ設備不足の状況も起きた。
- バランスシート調整の一巡:有利子負債の削減が進み、利益などキャッシュフローを負債の削減でなく新規投資に向ける姿勢に変わった。
- 事業再構築:M&A、業界再編、海外事業展開、あるいは事業部門のスクラップアンドビルドなどが進み、今後の投資戦略が明確化しつつある。
- 競争力回復と国内回帰:製造業は対外競争力に関し失いかけていた自信を回復し、投資を国内に回帰しつつある。
- 成長の種:中国の躍進、IT・デジタル家電など今後の需要の牽引分野が展望できるようになった。
- 資産デフレの解消:地価が下げ止まるなか、土地取得を伴う投資意欲が復活している。
以上のような条件変化を受け、企業行動は、一言で言えば「縮み志向」から「拡大志向」経営へ徐々に転換しつつある。そのため、短期的に景気を下押しする要因があっても、それをすぐに押し戻すだけの反発力が備わってきている。景気が「踊り場」に陥っても、本格的な後退に至らなかったのはこのためだ。
第2に、現状は依然過渡期であり、企業は過去の厳しい経験、国際競争の激化から基本的にはリストラ経営の手綱を緩めず、賃金引上げを抑えている。そのため、企業は大幅増益を続けているのに、サラリーマンの給料はわずかな増加にとどまり、個人消費は伸び悩んでいる。このことは一面から見れば、家計の犠牲の上に企業の活力が保たれているともいえる。
第3に、北京五輪を控えた中国経済の成長、さらに軍事支出拡大などによる米国経済の堅調持続などから、世界需要が高めの成長を継続していること。海外市場が好調なため、国内に多少の悪材料があっても輸出主導で景気上昇が持続できる環境となっている。
以上のような企業を取り巻く状況を勘案すると、足元の景気変調も深刻な景気後退にまで至ることはなく、1年足らずで景気は再び反転、上昇に向かうのではないか。
(以上は、筆者の個人的見解です。また経済には必ず不確定要素が伴い、予測の部分は、当然のことながら100%保証できるものではありません。投資は各自の判断でお願いいたします)。
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