[Vol.11]
コレステロール診断基準の改定
製薬会社元研究所長 亀井 敏夫さん
健康診断で、高コレステロール症と診断された方は多いのではないでしょうか。今までは、総コレステロール値220mg/dL以上が異常と診断されていましたが、この基準が変更になり、より合理的なものになりました。
今後は、総コレステロール値220mg/dLの診断基準は使用されなくなり、「高脂血症の診断基準」は、「脂質異常の診断基準」に改められました。今回の日本動脈硬化学会が発表した「動脈硬化性疾患予防ガイドライン
2007年版」では、広く普及している「高脂血症」という疾患名を「脂質異常症」に置き換え、総コレステロール値を予防や診療の基準にするのをやめ、代わりに低密度リポ蛋白質‐コレステロール(LDL-C)値と、高密度リポ蛋白質‐コレステロール(HDL-C)値をそれぞれ別々に設定しています。
総コレステロール値が高いと心筋梗塞や、脳梗塞の発生リスクが高かくなりますが、発生リスクを高くするのは、いわゆる悪玉といわれるLDL-Cであり、逆に善玉といわれるHDL-C値は、低いと良くありません。HDL-C値が低い場合に「高脂血症」と呼ぶのは適当でないので、今回の改定では病名が「脂質異常症」に変えられています。
動物ではHDL-C濃度が高く、通常は動脈硬化を生じることはありません。日本で開発された渡辺ウサギが動脈硬化を生じるくらいです。このウサギはLDL受容体を遺伝的に欠損しており、アメリカテキサス大学のGoldsteinとBrownがノーベル賞を受賞する助けになりました。HDL-Cが高いと心血管系疾患のリスクが下がりますので、HDL-C濃度を高くする、薬が世界最大の製薬会社のファイザー社で開発され、大々的に臨床試験が行なわれましたが、良い結果は得られず、薬を用い人工的にHDL-C濃度を高くしても良い結果は得られないようです。昨年この臨床試験の失敗によりファイザー社の株価が下がりました。なかなかうまくいかないものですね。
私は、最近、コレステロールと各種の生活習慣病との関係の研究をまとめるお手伝いをしていますが、HDL-C値が低い場合に心血管系疾患が多くなることを実感しています。
新基準は次の通りです
「脂質異常の診断基準」(空腹時採血)
LDLコレステロール値が140mg/dL以上
- HDLコレステロール値が40mg/dL未満
- トリグリセライド(中性脂肪)値が150mg/dL以上
「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2007年版」より
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