| かつての地球上には、大気の酸素も、また陸上で私たちが生きていく上で必要な真水も無かった!
こういえば、皆さんは信じることができるでしょうか。信じられないかも知れませんが、本当のことであり、しかも、それらを産み出してくれたのは生物だったのです。
ふつう私たち人間もふくめて生物は、環境、たとえば大気、太陽エネルギーなどの影響を受けて生きていると考えています。ところが、逆に生物が、回りの環境を変えている。その最たるものが、この大気中の酸素です。
生態系のかけがえのない恩恵という話でもありますが、その驚くべきドラマ自体も「自然の驚異話」としてきわめて興味ぶかいものです。
大気中の酸素は、細菌がつくった!
「地球は青かった」
最初の宇宙飛行をおこない、地球をはじめて外から見たガガ―リン少佐の鮮烈なメッセージでした。しかし、生きものの棲んでいるこの青い天体は、最初から青い天体だったわけではありません。地球の誕生時は、大気は、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、水蒸気でしめられ、酸素はほとんどありませんでした。
しかし、今では大気中には約20%の酸素が含まれ、人間もふくめて生物は、酸素呼吸をして生きています。
それでは、酸素を呼吸する生物が、どうしてすめるようになったのでしょうか。
その最大の功労者は、なんとミクロン(1000分の1ミリ)という単位の細菌だったのです。
地球誕生が46億年前、生命誕生が40億年前といわれていますが、その生命誕生から10億年くらい経った30億年前ごろ、光合成、すなわち二酸化炭素と水を材料に、太陽エネルギーを使って有機物を合成する最初の生物が海の中で生まれました。それがシアノバクテリア(らん藻)。
まだそのころは、大気だけでなく海中にも二酸化炭素が飽和していました。シアノバクテリアは、この二酸化炭素と水を材料に太陽光エネルギーをつかってさかんに繁殖し光合成をおこないました。そして、ご承知のように、光合成は、有機物合成の結果として酸素を廃棄物として排出します。これが、青い地球をつくる最大のドラマといわれるものです。
酸素は、こうして大気中にだんだん貯まりはじめました。それは営々と20億年前から5億年前までの15億年近くつづきました。この数ミクロンの細菌の活動が大気中の酸素をつくり出し、地球を酸素呼吸生物のすめる天体にかえたのです。
シアノバクテリアの酸素発生活動が地球環境にもたらした次のビッグ・イベントは、紫外線を遮断するオゾン層の形成です。約5億年前には大気中に増えた酸素のおかげで上空にオゾン層が形成されました。こうして太陽からの紫外線が遮断され、ようやく生物の上陸が可能になるのです。最初の上陸生物は、コケやシダ植物だといわれています。それは、約4.5億年前です。それまで、なんと陸上には生物の影はなく、地球陸地は岩と砂だけの火星のような姿だったのです。
いまフロン・ガスでオゾン層の破壊が大きな問題になってきていますが、このような長い感動的な歴史のなかで生れてきた地球環境を、人間は、たかだかここ数十年という、地球的時間のなかでみれば一瞬でしかないうちに無にしようとしています。
4.5億年前の生物上陸以降、陸地は、大型のシダ植物や、約2.5億年前に高木性の裸子植物の森林の出現で緑おおわれ(のちに石炭になった)、さらにその陸上植物の光合成が酸素をつくり、という循環となって、青い地球は今日の姿になってきました。ちなみに、植物が光合成を行なう葉緑素は、シアノバクテリアを植物細胞が取り込んだものだといわれています。
緑が地球をおおったというこの出来事も、思いのほか重い意味をもっています。緑でおおわれるまで地球には日陰というものがなく、多くの動物などもすむところがなかったのです。その日陰という温和な微気象のおかげで、植物では被子植物、動物では昆虫類などを中心に、陸上の生物の多様性も一気にすすみました。
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