彩の国を彩る花と緑 16 「ノリウツギ」、またの名を「サビタ」
これくらい名前も知られないまま、多くの人が目にしている花も、あまりないのではないでしょうか。空気のような存在で、あまり意識されない?
ノリウツギ:ゆきのした科。
彩の国でも、6月から8月にかけ、ちょっとした山道などを走ると、道の両側いたるところに見かけます。日当りのいいところに、どこでも生えています。
右にお見せする3枚の写真を見れば、「あっ、これか」ということになるかもしれませんが、しかし、この花の名前「ノリウツギ」を知っている人はあまり多くはいないのではないでしょうか。
なぜ「ノリウツギ」?
漢字で書けば「糊空木」。
昔、和紙を漉くときに、この木の皮をすりつぶして、コウゾやミツマタの繊維に混ぜて、つなぎ糊にしたからといいます。
北海道では「サビタ」。
なんとロマンチックな! 日本語と思えない語感です。アイヌ語なのでしょうか。
小説『挽歌』で有名な原田康子の『サビタの記憶』に出てきます。
花を見てもわかるように、アジサイの仲間。
でも、普通のアジサイのボール状とは違って、花が円錐形なので、円錐花序といいます。そして、白く4枚の花弁のように見えるのは、実は、萼(がく)。しかもその萼片を具えているのは、装飾花。本当の花ではありません。雌しべ、雄しべを持って種子をみのらせるじっさいの花は、小さく固まった粒々の方。
装飾花の方は、花粉を運んでくれる虫たちを呼ぶために、わざわざ目立つように飾りだけの4弁の花を工夫したのです。「この近くに蜜があるよ」と知らせるための広告塔なのです。
ところで、夏の花は、なぜ白い?
以前、春先いちばんに咲く花は黄色が多いといいましたが(彩の国を彩る花と緑
10 春いちばんの花は、なぜ黄色い?)、真夏に咲く花は、なぜか白が多い。
花粉を媒介する虫たちが、真夏の暑い昼間は休み、むしろ涼しくて気持のよい朝夕に活動するから。薄暗い中では白がいちばんよく目立つ。
私の推理です。装飾花といい植物の芸には、驚くほど理にかなった知恵があります。
真夏の夜にだけ花を開くカラスウリも、花は白い。
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