彩の国を彩る花と緑 11 ウメウンチク ウメ:ばら科
この時期の花といえば、なんといっても梅。
彩の国にとっても、名所の越生梅林などもあって、なじみ深いですね(越生梅まつりは、2/17から)。
時代が下ると、「花といえば、桜」となりましたが、平安時代あたりまでは「梅」だったのは、ご存知の通り。多くの詩や歌にも詠われました。万葉集では、梅の歌が、萩についで多く、百十八首もあります。
私は、ウメには、ほかの木や草にない、なにか特別な神秘さといってもいいものを感じます(ここでは、文化的存在としては「梅」、生物種としては「ウメ」と呼びます)。
真冬といっていい1月あたりから咲き始め、花の香りもよく、その実は、青梅の時には、青酸があって毒。それが、健康にもいい梅干にもなり、おいしい梅酒にもなり、梅肉エキスにすれば、薬。底知れないパワーを秘めています。
梅エキスは、子どものころにお腹をこわした時、よく飲まされました。すっぱ苦いあの味は、いまでも舌に残っています。
ウメのタネを海に捨てると、海が荒れるなどという言い伝えも、昔の人が、ウメに神秘さを感じてきた一つの現れでしょうか。1〜2月という日本でもいちばん寒い季節に花開くパワー、それが梅の実にも宿っているのかもしれません。
さて、ウメに関して、森林インストラクターらしい話題を二つ。
「サクラ切るバカ、ウメ切らぬバカ」
サクラ、ウメそれぞれの樹種の性質からくる手入れ法の格言です。
サクラは枝を剪定すると、そこから病原菌が入り、枯れやすい。一方のウメは強い。だからサクラは剪定してはダメ、ウメは、できるだけ剪定した方がいい。
また、ウメは、よく盆栽仕立てにされるように剪定するほど樹形がよくなり、花つきもきれいだが、サクラは奔放にのばした方が、花の見栄えもいい。
「ウメは、奥ゆかしく上品で、サクラは、開放的で華やか」、それぞれがもつこの性格にもこの格言の背景があるのかもしれません。
「ウメやサクラは、暖冬ほど早く咲く?」
これは、正解でもあり、より正確にいえば、正解ではありません。
地球温暖化、ヒートアイランド現象などでウメやサクラの開花が、だんだん早くなってきている。これは、まぎれもない事実のようです。
しかし、暖冬になればなるほど、開花が早くなる? じつはそうでもないのです。
それには、ウメやサクラの深謀遠慮の開花のメカニズムが関係しています。
彼らはいずれも、花芽は、前年の夏、もう7月ころにつくります。
それが、どうしてすぐにではなく、翌年の春まで開かないのか? 7月に花芽をつくり、それから蕾を成熟させ開花すれば、寒くなっていく秋に開花し、実が熟するのは、冬になります。それでは、実を熟させることはできません。
だから、花芽をつくってもそのまま休眠させて、暖かくなる翌年の春に開花させ、実を熟させるのです。
そのために、休眠が解かれ、蕾が目覚めるには、冬の寒さを必要とするというメカニズムが組み込まれているのです。
ということは、逆にいえば、冬が寒くなければ休眠が解けず、開花しないのです。ここに、「ウメやサクラは、暖冬ほど早く咲く?」が、無条件に正解でない理由があるのです。このまま温暖化が進んで冬の寒さがなくなれば、ウメもサクラも開花しない、などということになるかもしれません。そんなに温暖化すれば、ウメやサクラ自体が生きていけなくなるのが先でしょうが。
冬の寒ささえ経過すると、春が暖かくなればなるほど、早く開花します。つまりは、冬が寒く、春に急速に暖かくなると早く開花する。こういうメカニズムをもっているのです。
ところで、ウメやサクラは、何で正確に季節を知る? 季節を間違え、秋に花を咲かせたのでは、だいじな実をみのらせることができず、生きていけません。
なんと、彼、彼女らは、日照時間で、ちゃんと季節を知るといいます。花芽をつくるのも、休眠のシグナルを出すのも、いずれも日照時間(正確には、夜の長さ)によるのです。夏至を越え夜が一定の長さを超えれば、花芽をつくり、それを休眠させる物質をつくります。
気温は、バラツキがあってあまり正確ではありません。その点、日照時間は地球の公転によるため、あくまで正確です。
一方、休眠を解き、花を開かせるのは、気温によるのです。冬の寒さを経たあと暖かくなって、もう冬が過ぎたことがわかると、安心して花を開花させることができます。だから春に暖かい日が続けば、開花が早まるのです。
彼、彼女らの真剣な生きる知恵が生み出したメカニズムです。
最後に、梅にまつわる有名な俳句と歌。
梅一輪 一輪ほどの あたたかさ
服部嵐雪
地球温暖化による暖冬で、今年など、この句の風情はなくなってしまった?
東風(こち)吹かば にほひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ
拾遺和歌集 菅原道真
ご存知、学問の神様・天神さん菅原道真が、九州大宰府に流されて、都をしのんで詠んだ歌。梅をこよなく愛する菅原道真を慕って、京の都から梅が大宰府に空を飛んでいった! このような伝説が生まれてくるのも、昔の人が、梅になんらかの神秘さを感じていたからかもしれません。
天神さんには、梅がかならず植えられています。
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