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元気埼玉 >  楽しむ >  森林インストラクター「環境問題を考える」

 この講座の本来のテーマは、生物種の絶滅や、それをもたらす有害外来種などの「生物多様性」の問題ですが、今日の地球環境の二大問題のいま一つ「地球温暖化」も、これまで考えてきた地球生態系の異変として捉えられます。というよりもそうした大きな視点から見ないと、本当の姿は捉えられません。

  今回は、生物多様性問題からちょっと寄り道をして、地球温暖化を地球史的な生態系の異変という視点から考えてみましょう。

  地球温暖化の原因、それは昨今、新聞やテレビでもかまびすしく報じられているので、皆さんもよくご存知かもしれませんが、石油、石炭、天然ガスなどの化石エネルギーの多使用、CO2(二酸化炭素)の吸収源となる森林の減少などです。

  大気中のCO2が増え始め、温暖化が始まったのが、化石エネルギーの石炭を大量に使い始めた産業革命(きっかけとなったワットの蒸気機関発明が1785年)からです。18世紀末の産業革命前に280ppmだったのが、今では370ppm以上。二百年ちょっとで30%超の上昇です。このまま化石エネルギーを使い続けると、今世紀末には600ppmを越すだろうといいます。

 それでは、なぜ産業革命後にCO2が急増したのでしょうか。

 もちろん産業革命前と後では人類の産業・経済活動の規模がぜんぜん違い、エネルギーの使用量、したがってCO2排出量に大差があります。

 しかし、それ以上に前後での使用エネルギーの質的な違いがCO2増加に大きく関係しています。産業革命前は、人類が使うエネルギーはほとんど薪や木炭などのバイオマスでした。それが革命後は石炭、さらにその後は石油、天然ガスなどの化石エネルギーが加わりました。

 どうしてバイオマスではCO2濃度が上がらないのに、化石エネルギーでは上がるのでしょうか。

 薪や木炭だと、森林の木を伐って燃やしても、その森林がまた復元すれば、大気中に出したCO2をまた森林が光合成で吸収します。つまりは木材などバイオマスだと、地球生態系の炭素(C)循環の輪に納まっています。だからバイオマスはカーボン・フリー(CO2増減に中立)といいます。
一方、化石エネルギーだとどうでしょうか。

 人類は、9,000,000年かけて植物が光合成で閉じ込めてきた炭素を、たった1年で大気中に放出している。それが、地球温暖化の最大の原因。

 前々回で、大気中のCO2を、最初はシアノバクテリアなどの細菌が、そして植物が生まれてからは、それらが光合成で減らしてきたといいました。

  それでは、その減らしてきた大気中のCO2はどこに行ったのでしょうか。

  その中の多くは、石油や石炭となって、地中に閉じ込められたのです。

  石炭は約4億年前から陸上にできた森林の樹木が地下に埋まってできました。一方、石油はまだ本当の出来た原因はよくはわからないようですが、やはり太古のプランクトンなど海洋生物の有機物がもとになっているというのが、学者のほぼ一致する意見となっています。

 そうだとすると、いまわれわれがエネルギーとして使っている化石エネルギーは、何十億年(シアノバクテリが誕生したのは、27億年前といわれている)かかって、大気のCO2が地中に閉じ込められていたものだということになります。あの大量の石炭、石油などを生物が作った? 信じられないかもしれませんが、億年、十億年というとんでもない時間は、そのような信じられないことを起こすのです。いつかも触れましたが、一億年とは、動いているとは思えないハワイ諸島が日本の近くにやってくるほどの途方もない時間なのです。

 人類は、その、二十数億年をかけて営々と生物たちが地下に閉じ込めてきた化石エネルギーを、わずかここ二〜三百年で使いきろうとしています。石油、石炭、天然ガス、その採掘可能埋蔵量にいろいろな説がありますが、今の使用量の趨勢が続いていけば、あと百年ももたないかもしれません。であるとすれば、ざっと計算すれば2,700,000,000年で貯めたものを、18世紀末からのわずか300年で使いきる。2,700,000,000÷300=9,000,000、すなわち、9,000,000年かけて貯めたものをたったの1年で使い切る計算になります。つまりは、九百万年という気の遠くなる時間(人類の誕生が500万年前といわれている)をかけて生物たちが営々と減らしてきたものを、一年で逆に大気中に返しているということになります。
それでは、CO2濃度が上がらないわけがありません。生態系の炭素循環の輪から大きくはみ出してしまっているのです。

 生物も単細胞の細菌から霊長類のヒトへと進化してきていますが、地球自体も40億年以上をかけて、火の玉から、荒涼たる地球、そして現在の青い、温和な地球へと進化してきました。太陽系で唯一、液体の水があるおかげで生命が誕生し、その生命(生物)が環境を変え、今の青い天体に変えてきた40億年以上の進化の歴史。その歴史を、化石エネルギーの見境のない多使用という人類の所業により、進化を逆に回し、否定しようとしているともいえるのです。

  その逆転も、CO2の吸収源である森林生態系が健全で拡大していれば、ある程度とどめることができます。しかしその森林も、毎年、日本の国土面積の約半分が地球から消えていっています。森林も現在では吸収源ではなく放出源となっているのです。こうして、ダブルパンチで大気中のCO2が増え、温暖化が加速しています。

  この化石エネルギーの多使用という問題は、大気中にCO2を戻して温暖化を進めるだけでなく、それらは使い切ればもう再生はできません。資源的にも持続不可能なのです。環境面だけでなく、資源面からみても、孫・ひ孫たちの将来はどうなるのでしょうか。

 最後に、この「地球温暖化」と「生物多様性」の関連について触れておきましょう。

 かつての地球でも寒い氷期と暖かい間氷期を繰り返してきましたが、それは万年単位というゆっくりとした変化でした。産業革命以後のCO2急増で気温上昇が顕著になってきたここ百年の温暖化(+1℃)は、それらと比べると圧倒的なスピードです。

  ゆっくりとした気候の変化には生物も住み場所を変えるなど対応できました。しかし、ことに自らは動けず移住速度の遅い植物では、こんなスピードにはついていけません。たとえば高山などの寒冷な環境にいる植物では逃げる場所もなく絶滅が危惧されているものも多くあり、地球温暖化が生物多様性にも大きな影響を与えることが心配されています。

  一方、生物多様性が保たれ生態系が健全であることが、地球温暖化防止に有効であることはもういうまでもないでしょう。生物多様性がもっとも高い森林やサンゴ礁は、健全であればあるほど大きなCO2吸収源となります。その森林は温暖化がもたらす乾燥による山火事や砂漠化で、サンゴ礁も海水温上昇による白化現象で、急速に劣化し始めています。


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